京町の家 House in Kyo-machi

House in Kyo-machi 2012  Build a house

京町の家 熊本県熊本市 2012 新築 

 

母と二人の小さな家

 

 

初めての熊本県でのプロジェクト。クライアントはお母様との二人暮らし。『熊本市内のハウスメーカーと工務店に予算等の条件で断られ続け、どうしたらいいかわかりません』というご相談を頂き、条件だけでも聞いてみようと思いお会いすると、確かに厳しい条件ではありましたが、決して無理ではないという印象を受けた事と、アトリエボンドにご協力頂けるという条件を頂いたので、お引き受けした物件。

 

ご高齢のお母様と依頼者である息子さんの二人暮らしの住まい。お母様がご相談の数ヶ月前に転倒され怪我をし入院されたこと、お母様の家が市の立ち退き工事で入居期限が決まっているなど、設計者として簡単に答えの出せないようなプロジェクトでしたが、お母様に対してのお気持ちに何とかお応えしたいと思い、早々にプランを検討し、プレゼン=基本設計=建築確認という超荒技で一気に進めました。以前から介護施設や介護団体のNPO法人の役員として関わっていた事から、高齢者の住まいづくりについては自信がありました。

 

その他の条件としては、車が好きなので駐車場に屋根が欲しい。熊本は西風が強いので、風の抵抗を受けない住まいにして欲しい。あとは全てお任せしますというもの。しかし予想以上に予算が厳しく、既製品で割り切り、構造と床材に熊本県産の杉と桧を使い、あとは合板とクロスを使い、設備機器はお母様の好みに合わせて既製品を選びカタチにしました。

 

プランは1回で満足頂きほぼ変更する事なく竣工したのですが、車をビルトインにしたことや、お母様への配慮、コストの中にもこだわりが感じられる提案が出来た事に特にご満足頂けました。デザインや材料は全てお任せだったので、熊本城から徒歩5分という好立地を活かし、また住まい手の年齢も考えて、熊本城のような黒く落ち着いた外観デザインにしました。前面道路からのアプローチは玄関を奥に取る事により、1/20勾配という緩いスロープを確保出来、お母様が車椅子になられても、介助者の負担を減らせるアプローチとなりました。玄関から宅内のアプローチも段差を10cmに押え、介助者の助けがあれば簡単に外出出来ます。またお母様のお部屋を南側に配置し、光と風、外の気配を常に感じる事が出来て、トイレと浴室はお部屋に隣接した位置にレイアウト。トイレ、脱衣所、浴室を一つの空間にする事で、介護の負担を減らせます。予算は厳しくとも気密と断熱にこだわったことから、オープンハウス当日外気温2℃だったにも関わらず、8帖用のファンヒーター一台で家の隅々までが暖かいとご来場者全員に体感頂けました。

 

熊本市からの要請で年内に取り壊しの条件だったため、ご依頼頂いてから竣工まで7ヶ月と短いスケジュールで全てを進めなければなりませんでしたが、地元業者さんと密に連絡を取り合い、工事は2ヶ月で竣工。無事に引渡しを迎え、厳しい条件のプロジェクトでしたが、住まい手には大変喜んで頂きました。

 

 

 

 

 

京町の家(熊本県熊本市)

木造2階建住宅 在来工法

敷地面積:109.86㎡(33.23坪)

1階床面積:40.58㎡(12.28坪)

2階床面積:33.13㎡(10.02坪)

延床面積:73.71㎡(22.30坪)

自動車車庫面積:12.42㎡(3.76坪)

設計・監理:設計事務所アトリエボンド

施工:今田工務店